そう遠くない未来。

このお話は、人だったり動物だったりが同じ言葉を話して共存する

少しファンタジーな世界でのお話です。

 

* * *

 

 

夜のランニング

 

今から、そう遠くない未来。

イヌメンZという犬のお面をかぶって生活している男がいました。

彼はお面をかぶっていること以外は普通の生活をしていて、

周りも決して彼がなぜお面をかぶり出したのかを聞いたりしませんでした。

 

ある月の綺麗な夜。

仕事に疲れたイヌメンZは、気分転換をするために海までランニングしていました。

ところが汗を拭こうとお面をずらしたところ、うっかり橋の上からお面を落としてしまいます。

 

「どうしよう」

慌てて暗い海を覗き込むイヌメンZ。

 

すると橋のすぐ近くの岩場で月光浴をする人魚の姿が見えました。

 

「そのあたりに犬のお面が落ちてませんか?」

 

イヌメンZが声をかけると、人魚は身をひるがえして海へ潜り、沈んだお面を抱えて戻ってきました。

その姿を見たイヌメンZが急いで橋の下へ降りると、人魚は半身を海から出して、お面を手渡し微笑みかけました。

 

「私の名前はぽちまり。あなたは?」

「イヌメンZ」

 

* * *

 

初めて人魚を見て、なんだか楽しい気分になったイヌメンZ。

 

(また今度会えたらいいな)

 

そう思いながら、濡れたお面を手に持ったままランニングを再開したのでした。

 

 

 

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