お地蔵様のお導き
夢枕に立ったお地蔵様と、ゆぎょの語らいは続きます。
「お地蔵様、わたしの過去って・・・それと今日の怪物とがどう関係するのか、わたしには・・・」
「記憶が戻ればあなた自身どうすればいいか分かるはずです。
そしてもうその姿は必要ないでしょう」
お地蔵様の持つ月の形の錫杖が明るく光り、光の輪がゆぎょを包むと、
そこでゆぎょは夢から覚めました。
* * *
「・・・わたしの、過去?」
身を起こして、しばらく呆然としているゆぎょでしたが、
イエローチッチに声をかけられて我に返りました。
「ゆぎょ大丈夫? ずいぶん大きな声を出していたけど」
隣でイエローチッチが目をこすっています。
かぶり笠の隙間から見える外は、少し明るくなっていて、
どうやら太陽の陽が昇りかけている時間のようです。
「・・・わたしの過去」
またしてもこうつぶやいたまま考え込んでいるゆぎょを
イエローチッチが覗き込みます。
(イエローチッチとの出会いはしっかり覚えている)
「最初は、お腹がすいて倒れていたんだよな」
イエローチッチを見ていきなり出会った頃のことを語りだすゆぎょですが、
何のことかさっぱりわからないイエローチッチ本人はちょっとびっくりしているようです。
「急に何言ってんだよ! びっくりするだろ? ざしきもいなくなって
ゆぎょまでおかしくなっちゃったのかと思ったじゃないかよ!」
ワァワァと騒いでいるイエローチッチに謝りながら、
ゆぎょは自分の記憶を辿っていっていた。
(覚えている中で一番古い記憶は、パリやスイスで農業を手伝っていた頃だろうか。
あれより前って? 自分は一体何をしていたのだろう。昔のことが思い出せない)
そういえば夢から覚める時、お地蔵様が
「わたしは大丈夫ですよ」
と言ったような気がしたしたとゆぎょは思っていました。
*2018年11月2日に公開したものを再掲載しました。
第17話→
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