まさかの事態に・・・
頭上が暗くなり、ふと見上げた空には大きな鳥が見えました。
「違う! 普通の鳥じゃない! モノノケだ!」
ゆぎょが叫ぶと同時に「錫杖」の中にいる妖も悲鳴をあげました。
モノノケを懲らしめるために使用する錫杖には、
毛虫のような妖がセットされていて、
この妖が悲鳴をあげると近くに危険なモノノケがいる事が
わかるのです。
「やっぱりモノノケなんだ〜!」
錫杖の妖の声を聞いて、
イエローチッチが震え上がります。
そんな中、急降下してきたモノノケは、恐ろしい形相で
ゆぎょ達の前に着地しました。
そして、迷うことなく大きなくちばしで
ざしきを咥えて連れ去ったのです。
「ざしきちゃん!!」
ゆぎょが叫びましたが、モノノケは勢いよく上昇し、
雲の合間に消えてしまっていました。
全てはあっという間の出来事でした。
愕然とするゆぎょとイエローチッチは、何も言うことができません。
空を見上げても、そこにざしきの姿はおろか、
あの巨大なモノノケの影も形も見えないのです。
「ど、どうしよう。ざしき、泣いてた! なのに何もできなかった」
いつも憎まれ口を叩いているイエローチッチも、真っ青になっています。
「・・・追いかけないと」
かろうじて声を絞り出し、自分で言った一言を
ゆぎょはまるで他人が話しているかのように
感じていました。
そして、空を見つめながら少しずつ足を進めましたが、
一体どこへ向かえばいいのか皆目見当がつかず
途方にくれるゆぎょとイエローチッチなのでした。
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